獣医師法の概要

<関係法令等>

◆ 獣医師法 (昭和24年6月1日法律第186号) 以下「法」と記載 
◆ 獣医師法施行規則 (昭和24年9月14日農林省令第93号) 以下「規則」と記載
◆ 獣医師法施行令 (平成4年8月7日政令第273号) 以下「令」と記載
◆ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 以下「薬機法」と記載
◆ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律関係事務に係る技術的助言について 以下「助言」と記載

※注意:以下の内容については、簡略化した記述部分がありますので、必ず法令等の原文をご確認ください。

1.獣医師法に基づく届出等

◆法第22条に基づく届出(獣医師の住所・氏名等の届出)

 ※こちらをご覧ください。

  獣医師の分布、就業状況、異動状況等を的確に把握するため、2年ごとに行われています。
  獣医師の資格を有する者は獣医事への従事の有無にかかわらず、届出が義務付けられています(罰則もあります)。
  ただし、長期海外出張等で日本に住民票のない方は届出の必要はありません。

◆獣医師免許関係(規則第1、3、4、8、9条) → 詳細はこちら (農林水産省)

 ○新規 : 新たに獣医師免許の交付を受けようとする場合、農林水産省へ申請
         → 免許証が与えられない場合:法第5条参照
 ○変更届(書換申請) : 氏名、本籍地などの登録事項に変更があった場合、30日以内に農林水産省へ申請
 ○再交付 : 亡失、き損等の場合、30日以内に農林水産省へ申請

◆獣医師の死亡の届出(規則第5条) → 詳細はこちら (農林水産省)

 ○戸籍法等の届出義務者が30日以内に農林水産省へ届出 

2.獣医師以外の者が飼育動物の診療を業務としてはいけません

◆獣医師法第十七条:獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない。

◆愛玩動物看護師(国家資格)については、獣医師の指示のもとに行う、愛玩動物看護師法に規定する動物に対する一部の診療行為(動物に対する危害が少ないと認められる行為)が認められています。(詳細は 農林水産省HP 愛玩動物看護師 / 愛玩動物看護師法に関するQ&A  参照)

◆獣医学生が臨床実習で行う診療行為は、基本的に違法性はありません。(詳細は「獣医学生の臨床実習における獣医師法第17条の適用について」、「獣医学共用試験」 参照)

◆ブリーダーやペットショップにおいて、獣医師でない者が投薬やワクチン接種などを行うと法に抵触する可能性があります → 摘発事例 (販売等の目的で一時的に飼養している飼育動物に対する診療行為や、他人の求めに応じて行う診療行為を、獣医師でない者が反復継続して(反復継続する意志をもって)行うと、法に抵触する可能性があります)

◆獣医師以外の者が、飼育動物以外の動物(は虫類や魚類など)に診療行為を行っても、違法性はありません。ただし、公衆衛生上重大な被害を及ぼすことなどもあり得ることから、必要に応じて獣医師の診察を受けるようにしてください。

◆外国で獣医師免許を取得していても、日本国内では獣医師として認められません。⇒「獣医師」又はこれとまぎらわしい名称の使用や獣医師として働くこと等はできない(日本の獣医師免許の取得が必要)。

「飼育動物」とは : 牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずら、オウム科全種、カエデチョウ科全種、アトリ科全種。
  個々の動物が人に飼養されているか否かは問いません(例えば、野犬や野良猫も飼育動物)。

3.診断書・処方せん(指示書)等の交付、特定の医薬品の投与や処方をする場合、獣医師が自ら診察等を行わなければなりません。(法第18条)

◆診断書、処方せん(指示書)、出生証明書、死産証明書、検案書の交付にあたっては、自ら診察・検案・確認(※1)を行った上でなければ交付してはなりません。
 ※「自ら診察」とは : 獣医師本人が、現在の獣医学的見地から見て飼育動物の疾病又は健康状態の診断を下しうる程度の行為を、飼育動物と対面した上で行うこと。従って、当該家畜に直接対面して診察することを一度も行わずに、電話(テレビ電話を含む)、Fax等により症状等を聞き取るだけでは、「自ら診察」したことにはなりません。 →  こちらを参照「要指示医薬品の投与及び処方にあたっての注意事項」(農林水産省)

◆劇毒薬、生物学的製剤(ワクチン、血清、診断液等)、その他省令で定める医薬品(※)、薬機法で定められた再生医療等製品の投与、処方については、自ら診察を行った上で行わなければなりません。
 ※規則第10条の5に定める医薬品 : 要指示医薬品、処方せん医薬品、使用規制対象医薬品 など 

◆獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤した薬剤(要指示薬)を交付する場合は、その容器又は被包に所定の事項を記載してください。「助言 第5-2-(2)」参照。 記載事項:(ア)用法及び用量 (イ)交付の年月日 (ウ)交付の対象となった動物の種類及び頭数 (エ)使用者が遵守すべき基準が定められた医薬品にあっては、その使用の時期 (オ)飼育動物診療施設の名称及び所在地又は獣医師の氏名及び住所

◆指示書(処方箋)について(「助言」)

 ○ワクチン : 獣医師が臨床上健康と認める動物について、予定されたワクチネーション・プログラムに基づき投与時期の異なる要指示医薬品であるワクチンを投与する必要があると当該獣医師が認めた場合、一括した指示書を発行して差し支えないが、できるだけ短期間のものにとどめ、一括した指示を行う必要性及び要指示医薬品の不適正な使用の防止を図るために必要な事項を詳細に記載すること。
 ○交付する単位 : 対象動物の頭羽数の単位は、少なくとも、日齢別、月齢別あるいは体重別等処方の目的別に分け、獣医学上同一と考えられる範囲内の頭羽数として記載すること。
 ○要指示医薬品の用法、用量、注意事項等を使用者に確実に指示し、指示を逸脱して使用されることのないよう指導及び確認を行うこと。

◆「指示書(処方せん)」の記載事項 (助言 第5-2-(2))
 ○ 対象動物の種類及び頭数  ○ 対象動物の名号、性、年齢又は特徴 ○ 薬剤名 ○ 用法及び用量 ○ 使用者が遵守すべき基準が定められた医薬品にあってはその使用の時期 ○ 処方せん又は指示書発行の年月日 ○ 対象動物の所有者若しくは管理者の氏名又は名称及び住所 ○ 飼育動物診療施設の名称及び所在地又は獣医師の住所

◆「要指示医薬品」「使用規制対象医薬品」「獣医師の特例的使用」等については、こちらを参照してください

◆獣医師であっても、業として医薬品(上記の特定の医薬品に限らず、全ての医薬品が対象です)を販売・授与することはできません。販売等を行う場合は、医薬品販売業の許可が必要です。また、購入した医薬品を他者に販売・譲渡した場合も法律違反となります(ただし、同一法人の他の診療施設(分院)の場合、法人名義で購入した医薬品については可能です。麻薬は除く。)(薬機法)。
 ※診療せずに処方を行うと販売行為に該当します。診療に伴う処方の場合は、カルテへの記載が必須です。

◆医療機器についても、種類によっては販売等の許可や届出が必要になるものがありますので、販売・授与・貸与を行う場合は御注意願います(高度管理医療機器・特定保守管理医療機器→許可、管理医療機器→届出)(薬機法)。

◆遠隔診療については、下記参照

4.遠隔診療について

◆産業動物

 ○詳細は ⇒ 「農林水産省HP」(リンク先の「家畜の遠隔診療」をご覧ください)
 ○飼養衛生管理基準で定める農場毎の担当獣医師等で、定期的に指導等を行っており農場の状況を熟知している場合は、遠隔診療も一部可能。 ⇒ 「家畜における遠隔診療の積極的な活用について」(農林水産省)
 ○カルテには、遠隔診療であること、及び、対面診察に代替し得る程度の情報を記載する必要があります
 ○遠隔診療の事例など
  ・家畜における遠隔診療の積極的な活用に係る動物薬の取扱いについて(農林水産省)
  ・事例集(農林水産省)

◆愛玩動物 → こちらを参照「愛玩動物診療における遠隔診療の適切な実施に関する指針」(日本獣医師会)

◆不適切な遠隔診療は、獣医師法、薬機法(医薬品の販売に該当)に抵触する可能性があります。

5.診療及び診断書等の交付を求められた時は拒むことはできません。(法第19条)

◆「診療を業務とする獣医師が、診療を求められたとき」、「診療、出産立ち会い、検案をした獣医師が、診断書、出生証明書、死産証明書、検案書の交付を求められたとき」は、正当な理由(※)がなければ拒んではなりません。
  ※法令に根拠を有する場合、獣医師自身の病気・不在・治療中 など

◆診断書等の書類については、記載事項や様式が定められていません。 
  ※ただし、家畜の緊急と殺(と畜場法第13条第3項)の場合、と畜場法施行規則第15条第2項に定められた事項を記載した死亡診断書又は死体検案書が必要です。 記載内容 ○ 診断又は検案の年月日時 ○ 死亡年月日時(不明のときは、推定年月日時) ○ 獣畜(牛を除く。)の種類、性別、年齢(不明のときは、推定年齢)及び特徴並びに牛にあつては、性別、月齢、出生の年月日及び特徴 ○ 病名及び主要症状(死体検案書にあつては、主要症状にかえて死体の状態) ○ 診断又は検案した獣医師の住所及び氏名

6.診療をした時は、保健衛生に関する指導をしなければなりません。(法第20条)

◆保健衛生に関する指導とは
  伝染性疾病の発生予防・早期発見・まん延防止対策(飼養衛生管理基準、ワクチン接種、消毒等)、給与飼料、薬剤の残留防止、副作用や耐性菌の発生防止、人獣共通感染症対策 などの助言、指導、啓発

7.診察した場合は「診療簿(カルテ)」、検案した場合は「検案簿」に記載し、一定期間以上保存しなければなりません。(法第21条)

◆診療簿(カルテ)、検案簿の記載事項(「規則 第11条」「助言 第8-4」)。
 診療簿(カルテ): ○ 診療の年月日 ○ 診療した動物の種類、性、年令(不明のときは推定年令)、名号、頭羽数及び特徴 ○ 診療した動物の所有者又は管理者の氏名又は名称及び住所 ○ 病名及び主要症状 ○ りん告 ○ 治療方法(処方及び処置) ○ 対象動物に使用規制対象医薬品(抗生物質等)を使用したときは、医薬品の名称、用法・用量並びに出荷制限期間
 検案簿: ○ 検案の年月日 ○ 検案した動物の種類、性、年令(不明のときは推定年令)、 名号、特徴並びに所有者又は管理者の氏名又は名称及び住所 ○ 死亡年月日時(不明のときは推定年月日時) ○ 死亡の場所 ○ 死亡の原因 ○ 死体の状態 ○ 解剖の主要所見

◆診療簿(カルテ)、検案簿の保存年限 : 牛、水牛、鹿、めん羊、山羊は8年間、その他は3年間
  (保存年限の起算日:同一の飼育動物に対する一連の診療が終了した日)
  「電子カルテ」は、H17.4.1以降可能となりました。(「民間事業者が行う書面の保存等における情報通信の技術に関する法律」参照)

◆診断書やレントゲンフィルムの保存 : 法律上規定はありませんが、診療簿等に準じた期間の保存が望ましいとされています。

◆指示書の保存 : 法律上規定はありませんが、診療内容の一部として診療簿に添付した場合は、診療簿に準じた期間、保存しなければなりません。

8.罰則

◆免許の取消し 又は 業務の停止(法第8条第2項)
  ○第19条第1項の規定に違反して診療を拒んだとき。
  ○第22条の規定による届出をしなかったとき。
  ○第5条第1項第1号から第4号までのいずれか(獣医師免許の欠格事項)に該当するとき。
  ○獣医師としての品位を損ずるような行為をしたとき。

◆懲役、罰金(法第27、28号)
  ○獣医師でなくて飼育動物の診療を業務とした者
  ○虚偽又は不正の事実に基づいて、獣医師の免許を受けた者
  ○業務の停止の命令に違反した者

◆罰金(法第29号)
  ○法第2条違反、○法第18条違反、○第19条第2項違反、○法第21条第1項~第3項違反

 ※獣医師免許の欠格事項(法第5条)
  ・心身の障害により獣医師の業務を適正に行うことができない者として農林水産省令で定めるもの
  ・麻薬、大麻又はあへんの中毒者
  ・罰金以上の刑に処せられた者
  ・獣医師道に対する重大な背反行為若しくは獣医事に関する不正の行為があつた者又は著しく徳性を欠くことが明らかな者

9.獣医師の行政処分について

獣医師に対する行政処分に関する基本的な考え方(H27.12.3農林水産省) 
 H27.10.30付けで獣医事審議会免許部会から、行政処分内容を決定する審議のための規範が示されました。獣医師の方は、獣医師としての責任と義務を再確認してください。

獣医師倫理関係規程集 (日本獣医師会)

 

◆行政処分事例

○ 平成20年5月30日:業務停止3年
詐欺行為を働き診療報酬を詐取するとともに罹患動物に対し適切な治療行為を行わないどころか、死に至らしめた。獣医師に課せられた倫理的又は道徳的職責に大きく反する行為。
司法処分:民法第709条に基づく損害賠償責任を負う(東京地裁:約320万円の賠償命令)

○ 平成26年12月15日:業務停止3年
医薬品の製造業の許可を受けずに、業として製造された医薬品を販売し、また、医師でないのに、業として当該医薬品を人に注射した。
司法処分:懲役2年(執行猶予3年)及び罰金300万円/薬事法第55条第2項(販売、授与等の禁止)及び医師法第17条(医師でない者の医業の禁止)に違反

○ 平成27年11月24日:業務停止3年
薬局開設者又は医薬品販売業の許可を受けず、業として医薬品を販売した。
司法処分:懲役2年(執行猶予4年)/薬事法等の一部を改正する法律附則第101条の規定に基づき、同法による改正前の薬事法第24条第1項(医薬品等の販売業の許可)違反に該当

○ 平成24年6月14日:業務停止2年
高度管理医療機器等の販売業許可を受けず、業として3回にわたり、高度管理医療機器である針付注射筒を販売した。
司法処分:懲役2年(執行猶予3年)/薬事法第39条第1項違反に該当

○ 平成26年12月15日:業務停止2年
ペットの飼い主と共謀し、発症日を保険期間開始後であると偽り、保険会社から保険金を騙し取った。
司法処分:懲役2年(執行猶予4年) /刑法第246条第1項(詐欺)に該当

○ 平成24年4月2日:業務停止2年
覚せい剤を所持し、自宅において覚せい剤を使用した。
司法処分:懲役2年/覚せい剤取締法違反

○ 平成24年4月2日:業務停止1年
約1年間に渡り、医薬品の販売業の許可を受けていない者に対し動物用医薬品を譲り渡し、無許可で業として医薬品を販売するのを幇助した。
司法処分:罰金30 万円(略式命令)/薬事法違反幇助

○ 平成26年12月15日:業務停止10月
薬局開設者又は医薬品販売業の許可を受けず、業として医薬品を販売した。
司法処分:罰金30万円/薬事法第24条第1項(医薬品の販売業の許可)に違反

○ 平成27年3月17日:業務停止6月
経営する動物病院の売上げを除外して所得金額を隠匿し、正規の所得税額を免れた。
司法処分:懲役1年(執行猶予3年)及び罰金1600万円/所得税法等の一部を改正する法律附則第146条の規定に基づき、同法第1条による改正前の所得税法第238条第1項(脱税)に該当

○ 平成27年6月19日:業務停止4月
動物病院内において、来院した者に暴行を加え、傷害を負わせた。
司法処分:罰金20万円/刑法第204 条(傷害)に該当

○ 平成29年11月27日:業務停止1年10月
馬2頭に向け猟銃を発射し、よって同馬を死亡させた。
・司法処分:懲役1年[執行猶予4年](銃砲刀剣類所持等取締法違反及び動物の愛護及び管理に関する法律違反)

○ 平成29年11月27日:業務停止1年
・酒気帯び状態で自動車を運転するとともに、自動車運転上の注意義務に違反し、よって人に傷害を負わせた。
・司法処分:懲役1年4月[執行猶予3年](道路交通法違反及び自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律違反)

○ 令和5年11月9日:業務停止6月
・酒気帯びで車を運転した(0.45ミリグラム/呼気1リットル)。
・司法処分:罰金50万円(道路交通法違反)

 

 

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